
「未来のピースができるまで」では、当社がこれまでに生み出した“未来のピース”を取り上げていきます。ふだん知られることは少ないですが、当社は、世界に誇る日本発の未来の技術を開発しています。シリーズ第3回は、有沢製作所の織る・塗る・形づくる技術の集大成でもある、FRP(繊維強化プラスチック)開発の歴史と未来について語ります。
FRPの歴史と、広がる未来
FRPの活用について、航空機以外の可能性はどのような業界・市場にありますでしょうか?
例えば、自動車とか鉄道車両などのモビリティーや、インフラ関係含めた絶縁材料を使う業界ですね。有沢製作所はもともとガラスクロスやテープなどの絶縁材料の生産から、化学分野に参入してスタートしているのですよ。バテンレース(1)の製造から始まって、綿が織れるなら、ガラスも織れるだろうということで。アメリカからガラス繊維を輸入して日本で初めてガラス繊維を織った会社と聞いています。ガラス繊維は絶縁性があります。100年を超える歴史の中で、最初の頃はずっと重電メーカーなどに絶縁材料を提供していました。それから電子材料分野や光学材料分野に参入しています。絶縁材料の需要が多いのは、発電機関係や鉄道のモーター関係などのインフラ業界。絶縁材料は本当に普遍的で、私たちの生きる現代社会ではなくてはならない材料です。
(1)バテンレース:テープ状のブレードで輪郭を作り、内部をかがり縫いで埋めるレース製品。バテンレース製造は有沢製作所の祖業。
インフラとして今後画期的に伸びるとしたら、いま関わっている「ITER(イーター)」という核融合実験のプロジェクトなどは非常に面白いと思います。世界の7カ国が集まって実施しているプロジェクトで、核融合によってエネルギーを作り、発電することを目指す取り組みです。簡単にいうと、太陽がエネルギーを放出する仕組みを、地球上に再現しようという壮大な計画。原料である重水素は海水からとれるので、地球に無尽蔵にあるわけです。成功すれば世界のエネルギー事情を一変させる、未来の発電システムと言われています。この夢のプロジェクトで、私たちは超伝導コイルの被覆材を新たに開発し、採用していただきました。私たちの絶縁技術が高く評価されたというわけです。さらに絶縁用FRPもITERで採用されています。
その大きなプロジェクトになぜ有沢製作所が選ばれたのですか?
FRPとして少なからず日本で名の知れているメーカーというところですかね。さらに100年を超える歴史の中で、当社の絶縁材料は日本を代表する各重電メーカーさんからずっと信頼を得ています。それが大きいのではないでしょうか。
先輩方が作ってきた歴史と信頼があるわけですね。
その先輩たちがやってきたことを衰退しないように、もっと良いものを出していかなければならない。FRPもずっと順風満帆だったわけじゃなくて、苦しい時代もありましたから。今はまた少しずつ事業を伸ばしていくところなので、衰退しないように知恵を出して、発展していかなければいけないと思っています。
やりがいのある仕事ですね。
やりがいはありますね。私のやりがいと言えば、当社にしかできないNo. 1のものづくりをするというところ。そこにどうやって入り込めるかが重要です。

この仕事の面白さは何だと思いますか?
例えばハニカムパネルなら、製品として具体的な形になって、実際に重量が軽くなって、燃費も良くなる。結果として世の中に貢献できています。何年か前にアメリカに行く機会がありまして、初めて当社の新製品が使われている機体に乗りました。その型の航空機は100%有沢製作所製のハニカムパネルを使っています。なんだかうれしくなってしまって。当社の製品自体は見えないのですが、やっぱり自分の開発したものが使われていると思うと、うれしいですね。そういう体験ができる仕事を、後輩にもどんどん共有していきたいです。
以前、上司に言われたことで覚えているのが、「仕事はパッションだよ」という言葉。任された仕事に「パッション、熱意」とか「想い」がないと、なかなか最後まで続けるのはつらいですよ。やっぱりそういったものがないと、開発していても面白くない。そういう感覚をもっと後輩とか若い人たちに持ってほしいなと思います。やらされているのではなくて、やっている意義とか、できた時の姿を想像してね。熱い想いを持ってほしいなと。先ほどのITERだって、ビジネスとしてはまだ分かりませんけど、未来の世の中に役立つものだという想いでやるわけです。「仕事とは、世のため人のため」という言葉が、私の中にずっとある。未来のインフラを形にするために、こういう開発をもっとどんどんやっていこうよと思っています。一緒にやっている人たちと、そういう想いを語り合うことも大事ですね。私は今まで先輩や上司から、そんな熱い想い、パッションを教えてもらっていたと思います。(終)